体脂肪と妊活の関係性|多すぎても少なすぎても影響する?妊娠しやすい身体づくりとは

妊活をしていると、「体重を落としたほうがいいですか?」「体脂肪率は何%くらいが理想ですか?」と聞かれることがあります。

確かに、体重や体脂肪は妊娠と無関係ではありません。

でも、大切なのは単純に**「痩せれば妊娠しやすくなる」わけではない**ということ。

実は体脂肪は、ただ身体に蓄えられているエネルギーではありません。女性ホルモンの代謝やインスリン感受性、排卵など、生殖機能とも深く関わっています。

そのため、

体脂肪が多すぎる場合だけでなく、少なすぎる場合にも、月経や排卵に影響が出ることがあります。

今回は、妊活と体脂肪の関係について詳しくお話しします。

そもそも体脂肪は「悪者」ではありません

「脂肪=できるだけ少ないほうが健康的」と思われがちですが、そうではありません。

脂肪組織はエネルギーを蓄えるだけでなく、エストロゲンの産生・代謝や、レプチンなどのアディポカインと呼ばれる物質の分泌にも関わっています。

つまり脂肪組織は、ある意味では内分泌器官としての働きも持っているのです。

生殖機能は、

視床下部 → 下垂体 → 卵巣

という「HPO軸(視床下部―下垂体―卵巣系)」によってコントロールされています。

この仕組みがうまく働くことで、GnRH、FSH、LHなどが適切に分泌され、卵胞が育ち、排卵が起こり、その後に黄体期へと移行していきます。

体脂肪やエネルギー状態は、この一連のホルモン環境にも関係しています。

体脂肪が多すぎると、なぜ妊活に影響するの?

体脂肪が多い場合、とくに注意したいのが腹部・内臓脂肪の増加です。

内臓脂肪が増えると、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が起こりやすくなります。

すると身体は血糖値を下げるために、より多くのインスリンを分泌するようになります。

この高インスリン状態は卵巣に作用してアンドロゲン(男性ホルモン)の産生を促したり、肝臓で作られるSHBG(性ホルモン結合グロブリン)を低下させたりすることがあります。

その結果、遊離アンドロゲンが増加し、卵胞発育や排卵に影響する可能性があります。

特にPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)では、インスリン抵抗性と高アンドロゲン血症が病態に関係することがあります。

また脂肪組織では、アンドロゲンからエストロゲンへの変換も行われます。

そのため脂肪量が増えすぎることで、単純に「女性ホルモンが増えて良い」ということではなく、ホルモンのフィードバック機構を含めた全体のバランスが乱れる可能性があるのです。

肥満と排卵・不妊との関係

米国生殖医学会(ASRM)は、肥満が女性の

排卵・月経機能、自然妊娠のしやすさ、不妊治療への反応、妊娠・出産時のリスク

などと関連するとしています。

また、BMIが高くなるほど無排卵性不妊のリスクが上昇することや、同じBMIであっても腹部脂肪が多い女性では排卵障害との関連が強いことも報告されています。

2024年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析でも、妊娠前の過体重・肥満は妊娠までにかかる期間の延長、つまり妊孕性の低下と関連していました。

ただし、ここはとても大切です。

「体脂肪が多い=妊娠できない」ではありません。

肥満があっても自然に排卵し、妊娠する女性はたくさんいます。

体重やBMIは、妊孕性を左右する数多くの因子のひとつにすぎません。

では、体脂肪が少なければ少ないほどいい?

これも違います。

体脂肪が極端に少なかったり、摂取エネルギーに対して運動量が多すぎたり、短期間で急激に体重を落としたりすると、身体は「今は生殖にエネルギーを使える状態ではない」と判断することがあります。

すると視床下部からのGnRH分泌が抑制され、それに伴って下垂体からのLH・FSH分泌も低下し、卵胞発育やエストロゲン産生が低下することがあります。

その結果、

月経周期が長くなる → 排卵が不安定になる → 無月経になる

ということもあります。

ACOG(米国産婦人科学会)も、低体重、急激な体重減少、摂食障害などを続発性無月経の原因として挙げています。

そして近年のメタ解析では、低体重についても妊娠までの期間がわずかに長くなることとの関連が報告されています。

つまり妊活では、

「太りすぎないこと」だけでなく、「痩せすぎないこと」も大切なのです。

「体脂肪率○%なら妊娠しやすい」とは言い切れません

ここは、妊活中の方にぜひ知っていただきたいところです。

家庭用体組成計で表示される「体脂肪率」は便利な目安ですが、その数字だけで妊娠しやすさを判断することはできません。

またBMIも同様です。

BMIは、

体重(kg)÷身長(m)²

で計算できますが、筋肉と脂肪を区別することはできません。

同じBMIでも、

筋肉量が多い人、皮下脂肪が多い人、内臓脂肪が多い人

では身体の状態が違います。

ASRMも、BMIだけでは除脂肪量や脂肪分布を評価できず、腹部・中心性肥満には別の代謝リスクがあることを指摘しています。

だから妊活では、体重計の数字だけを見るのではなく、

月経周期、排卵、食事量、運動量、筋肉量、腹囲・内臓脂肪、血糖・インスリン代謝、睡眠などを一緒に見る

ことが重要です。

妊活中にチェックしてほしい7つのポイント

私は、妊活中の身体を見るときには、体脂肪率だけでなく次のような項目を総合的に考えることが大切だと思っています。

  1. BMI・体重変化
    急激に増減していないか。
  2. 体脂肪率
    あくまで身体組成を知るための参考値として見る。
  3. 腹囲・内臓脂肪
    インスリン抵抗性など代謝状態を考える手掛かりになります。
  4. 月経周期
    周期が極端に長い・短い、無月経になっていないか。
  5. 排卵の有無
    妊活では非常に重要なポイントです。
  6. 食事と運動のバランス
    「健康のため」と食事を減らしすぎたり、運動を頑張りすぎたりしていないか。
  7. 睡眠・休養
    妊活では運動や食事だけでなく、身体を回復させる時間も必要です。

痩せ型の方は「もっと痩せる」より、エネルギー不足を見直す

痩せ型で月経周期が長い、経血量が少ない、排卵が安定しないという場合には、ダイエットではなくエネルギー不足がないかを考えてみましょう。

食事量を増やすだけでなく、

十分な炭水化物が摂れているか、たんぱく質や脂質が不足していないか、運動量が多すぎないか、十分に眠れているか

なども確認します。

「妊活のために健康になろう」と頑張りすぎて、食事制限と運動を強化した結果、身体にとってはエネルギー不足になっているケースもあります。

妊活では、身体に「生殖に使えるだけのエネルギーがある状態」をつくることも大切です。

体脂肪・内臓脂肪が多い方は「急いで痩せる」必要はありません

反対に体脂肪、とくに内臓脂肪が多い場合は、血糖・インスリン代謝を意識します。

ただし、妊活中に極端な糖質制限や急激な減量を行うことはおすすめできません。

食事内容を整え、適度に身体を動かし、睡眠を確保しながら、無理のない範囲で代謝環境を改善していくことが基本です。

また、肥満があり無排卵の場合には、生活習慣改善による減量が自然排卵や排卵誘発への反応を改善することがあります。

一方で、「体重を落とせば必ず体外受精の出生率が上がる」というほど単純ではありません。

ASRMは、排卵のある肥満女性やIVFを受ける女性では、治療前の減量によって出生率が改善することは現在の研究では明確に示されていないとしています。特に年齢が高くなるほど、減量のために不妊治療を長期間延期することとのバランスも重要です。

ここは妊活中の女性を必要以上に「痩せなければ」と追い込まないためにも、とても重要なポイントです。

鍼灸では「体脂肪を減らす」のではなく、身体全体を見ていきます

妊活鍼灸で私が大切にしているのも、単純に体重や体脂肪率だけを見ることではありません。

月経周期、基礎体温、排卵の状態、冷え、睡眠、疲労、食事、運動、便通など、その方の身体全体を確認していきます。

痩せ型でエネルギー不足が疑われる方と、PCOS傾向があり内臓脂肪やインスリン抵抗性が問題になっている方では、当然アプローチも同じではありません。

なお、鍼灸そのものが体脂肪を正常化したり、妊娠率を高めたりすると断定できる十分な医学的根拠があるわけではありません。

そのため、鍼灸だけで何とかしようとするのではなく、必要に応じて婦人科・生殖医療で検査や治療を受けながら、食事・運動・睡眠・休養を含めて身体を整えていくことを大切にしています。

まとめ|目標は「痩せること」ではなく、排卵しやすい身体環境をつくること

妊活というと、つい「○kgまで痩せなくちゃ」「体脂肪率を○%にしなくちゃ」と数字に目が向きがちです。

でも本当に大切なのは、その数字だけではありません。

体脂肪が多すぎれば、インスリン抵抗性やホルモン環境を介して排卵に影響することがあります。

一方で少なすぎたり、エネルギー不足が続いたりしても、視床下部―下垂体―卵巣系の働きが抑えられ、月経や排卵に影響することがあります。

だからこそ目指したいのは、

「体重を落とすこと」ではなく、「排卵しやすい代謝・ホルモン環境をつくること」。

今の身体が「減らしたほうがよい状態」なのか、それとも「むしろ栄養や休養を増やしたほうがよい状態」なのか。

一人ひとり違います。

月経不順や無月経、排卵障害などがある場合には、体脂肪だけの問題と考えず、婦人科・生殖医療専門医に相談することも大切です。

焦って数字だけを変えようとせず、まずは今の自分の身体の状態を知ること。

そこから妊娠に向けた身体づくりを始めていきましょう。


参考資料

今回の医学的な部分は、主に米国生殖医学会(ASRM)「Obesity and reproduction: a committee opinion」、2024年のBMIと女性の妊孕性に関するシステマティックレビュー・メタ解析(PubMed)、米国産婦人科学会(ACOG)「Amenorrhea: Absence of Periods」を参照しました。